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検索練習は2つの分け方が出来ます。1)受容と産出。2)再認と再生。これらを組み合わせた結果、受容再生、受容再認、産出再生、産出再認という4つの検索練習の種類が存在します(Laufer & Goldstein, 2004)。受容再生では、学習者には目標とする語彙の意味を思い出すよう要求されます。例えば英語学習者が、dogと聞いて犬を思い出す事です。一方、産出再生では、提示された意味に対応する目標語彙の形態を学習者が産出することが求められます。例えば英語学習者が、猫をcatに訳す事です。これらとは異なり、受容再認と産出再認では学習者には選択肢から正解を選ぶように求められます。受容再認では、学習者は選択肢から目標単語の意味を選ぶか、提示された意味が正しいかどうかを判断します。一方、産出再認では、提供された意味に対応する適切な目標単語の形態を選択するか、提示された形態が正しいかどうかを判断することが求められます。
最初の分け方は、受容と産出です。学習者がどちらかを選ぶとすれば、産出学習を選ぶべきです。というのも、産出学習は受容学習よりも大きな学習効果をもたらすからです(Webb, 2005, 2009)。しかし、受容学習を無視するべきではありません。その理由は2つあります。1つは、低熟練度の学習者にとって、産出学習よりも受容学習の方が効果的な事があります(Terai et al., 2021)。その一因として、受容学習と産出学習の難易度の違いが考えられます。研究によれば、産出学習は受容学習よりも難しく、この差は低熟練度の学習者にとっては高熟練度の学習者よりも大きいとされています(Kroll et al., 2002)。そのため、低熟練度の学習者は高熟練度の学習者よりも産出学習で間違える可能性が高いのです。誤った検索練習は、誤った答えへの記憶の経路を強化し、逆効果の学習をもたらす可能性があるため、リスクが伴います(Marsh et al., 2007; Roediger & Marsh, 2005)。低熟練度の学習者にとっては、産出学習のプラス効果を上回る誤った検索のリスクが存在するかもしれません。この点を考慮すると、低熟練度の学習者は受容学習から始めるべきです。2つ目の理由としては、転移適切性処理説(Morris et al., 1977)は、受容練習は受容知識を向上させ、産出練習は産出知識を発展させると提唱しています(Webb, 2009)。受容知識と産出知識の両方が重要であることを考慮すると、学習者は受容的にも産出的にも単語を学ぶべきです。
次の分け方である再認と再生については、どちらがより良いかについて意見が分かれています。検索努力仮説によれば、困難な検索は容易な検索よりも学習を促進するとされています(Pyc & Rawson, 2009)。再生は再認よりも難しいため、再生は再認よりも効果的となる可能性があります(Laufer & Goldstein, 2004)。語彙学習活動を分析する枠組みであるテクニック・フィーチャー・アナリシスでは、再認の代わりに再生が含まれており、再生が再認よりも効果的な学習活動であることを示唆しています。一方で、再認は再生よりも容易なため、低熟練度の学習者や難しい語彙を学習する学習者にとっては再認がより適切な場合もあります(Laufer & Goldstein, 2004)。また、再認は再生に比べて時間をかけずにより多くの単語を学習することを可能にするため、効率的でもあります(Nakata, 2016)。一方で同じ研究は、再生が再認よりもスペリングの学習に大きな効果をもたらすことを示しました。これは、再認と再生のどちらも長所と短所を持っており、外国語語彙学習は学習目標に応じて両方を含むべきだということを意味します。
これらを総合すると、単語帳アプリには4つの検索練習のモード(受容再生、受容再認、産出再生、産出再認)が存在するべきです。